top of page
  • 執筆者の写真ぐらし ひがしおおみや

『都市計画・まちづくりからみる東大宮の将来像』

更新日:2021年3月8日

芝浦工業大学 作山康先生インタビュー ノーカット版

※このインタビューは2020年3月行われたものです


ひがしおおみやぐらし2020年春夏号に掲載した、作山教授インタビュー。

紙面に載せきれなかったお話を含めて、ノーカット版にてお届けいたします。


インタビュー中
まず環境システム学科の特徴や先生の研究内容についてお聞きしたいです。

 環境システム学科とは、『都市・建築・環境』を学ぶ学科です。最近は『環境』を大きなくくりにして都市や建築はその一要素として捉えています。近年はSDGsも話題ですが、地域から地球レベルで住みやすい環境を作るため、都市や建築を学びつつ全体の環境を良くすることを学びます。授業についても、座学だけでなくPBL(Project Based Learning、学生が自ら問題を見つけ、さらにその問題を自ら解決する能力を身に付ける学習方法)などを通じて、現場の課題を考えたり、地域に貢献できる活動を行ったりしています。

原市団地のイベント

 私は大学に赴任した2011年頃から団地の高齢化集団の実態調査を行っていました。近年はコミュニティ活性化やサードプレイスの研究にも取り組んでいます。例えば、原市・尾山台団地にコミュニティ活性化のツールとしてパラソルセットを提供し、イベントやカフェを行いました。原市団地内にはサテライトラボという大学の拠点を作って、定期的にイベントを開いたりもしています。


 夏頃は、学生とともに環境系のイベントとしてクールスポットづくりも開催しています。具体的には、駐車場を借りて、浴衣を着て打ち水やドライミスト実験を行いました。

 さいたま市内での活動も行っています。例えば大宮では、アーバンデザインセンターとの協力の一環で、ストリートテラスのサポートを行いました。道路拡幅用地を活用して、毎年屋台を出すイベントです。

浦和マルシェでは、折り畳み屋台作りやワークショップを実施しました。この活動は、屋台がにぎわいや楽しさにつながるツールになるのではないかという研究や、地域に貢献できるかという研究につながりました。

段ボールシティ

 また、年2回開催する小学生対象の公開講座『段ボールシティ』は倍率10倍の人気イベントとなりました。このイベントは、段ボールでできた建物や森林、インフラ設備を使って、子どもたちどうしが話し合って街並みを作るというものです。小さいうちからまちづくりに関わってほしい意図があります。みんなと話し合って街並みづくりのルールを決めるプログラムが好評です。

 東北の復興に関係した研究も行っていましたが、いまはある程度落ち着いてきたところです。


東大宮周辺地域の印象はどうでしたか。

 区画整理も終わり地区計画も決定しているため、法律上の都市計画は終わってしまいました。駅前通りの無電柱化も終了するなど、ハード面は完了していますが、教科書的な町並みに感じます。専門家からみると、もともと基盤整備というものは70点のまちづくりです。80、90点にするにはどうするべきでしょうか。住民は現状に満足しているか伺ってみたいですね。部分的な改善ですが、自治会館や公園の再整備、ポケットパークなども考えられます。やり方はいろいろありますし、住民のニーズだからおしつけるのではなく、住民の意見を聞いて実証実験を行いたいですね。東大宮の場合は、「まちづくり」というより、「まちづかい」が大切です。


『まちづくり』や『まちづかい』といった言葉がありましたが、その違いは何ですか。

 バブル時代などひと昔前は、大胆なまちづくりが行われることが多くありました。しかし、それを維持するのにはお金がかかります。これからは、今あるものをどう活かすかということも考える必要があります。これがまちづかいです。東大宮では区画整理は終わっているため、まちづかいの観点から改善しても良いと思います。


東大宮の魅力とは。

 駅の両側は飲み屋を中心にお店がたくさん分散していて、生活するには良い場所ですね。おいしい焼き鳥や和菓子屋もあります。ただ、もう一つ何かあっても良いですね。休日の南池袋公園のように、ぼーっとしながら空間を楽しめる工夫があっても良いと思います。東大宮は典型的なベッドタウンですが、自慢できるような憩いの空間があっても良いです。あとは最近セキュリティが厳しいですが、大学を開放して散歩するとかどうでしょうか。


東大宮の気になること、足りないことは。
駅前通りに緑は少ない(https://earth.google.com/web/)

 東大宮は意外に緑、街路樹が少ない印象です。公園や生産緑地のみで学園通りらしくないですね。枯れ葉の掃除などを理由に、緑化に消極的だったのでしょうか。そのような傾向になっていると感じます。

 それと、ここは『ふるさと』というような自慢できる空間がほしいですね。それは自分たちで見つけなければいけません。一発作り上げれば市民の自信にも、市民の誇りにもなります。東大宮の魅力的な資源(大学や学生とまちづくり等)を活用するべきでしょう。コミュニティ誌もとても大事ですね。地域の魅力発見、イメージアップにもつながり重要です。


地域の理想像はありますか。

 理想は学生がここで起業することです。本気で学習塾はできるはずだと思っています。不動産会社と連携して空き部屋を使うとかね。駅前の塾でなく家で教えてほしい、信頼できる人を紹介してほしいという悩みがベットタウンでは発生します。学生が部屋を借りて、1対1の学習塾を行うのはどうでしょう。学生や不動産会社、親子にメリットがありますし。理系の芝浦工大生が家庭教師として、数学苦手な子どもに指導するとか魅力的ですね。


公園を新たに活用するには?

 公園を拠点にコミュニティ形成ができても良いですね。さいたま市はハード整備が終わっているため、公園はネット整備くらいしか行われていません。そうではなく、例えばログハウスを作ってコミュニティカフェを運営しても良いと思います。学生も巻き込んで、まちづくりや公園の管理を担ったり、エリアマネジメントの拠点として使ったりするのも良いですね。寄付やクラウドファンディングによって行政の負担を軽くするといった現実的な戦略をたてることも重要です。そういうことをやりたいという「おっちょこちょい」が地域にいれば面白いなと思います。


今日のお話を伺っていると、作山先生はアイデアマンだと感じます。

 これは訓練だと思います。学生のときは、なかなかアイデアは浮かびませんでした。ただ、段々分かってきたのは、僕がアイデアを出しているのではなく会話の中で出ているということです。これは会話をしている相手と一緒に出てくるので、僕のアイデア100%ではないんですよ。話しているうちに、触発されて新しいアイデアが出ることもあります。これはコミュニティづくりだけでなく、建築設計にも通じます。そういった意味では、話すきっかけづくりが欲しいですね。


アイデアのお話も含め、会話やコミュニケーションの場づくりが重要なのですね。

 ほんのちょっとの機会でも良いんですよ。あとは住民が気軽に参加できるボランティアがあってもいいですね。1日からでも参加できるような。このようなささいなきっかけがコミュニケーションの輪を広げていきます。東大宮で幸せな生活を共有したり分け合ったりできるようなまちづくりをしていきたいですね。


最後に、今後の目標を教えてください。

 地域のニーズとしてぼやっとしているものを翻訳、磨く手伝いをすることですかね。今はイベントをたくさんやっていて手一杯ですが、本気でやりたいという人には協力したいです。

 もちろん、本気でやるからには住民も苦労しなければなりません。お互い覚悟をもって取り組む必要があります。大規模プロジェクトの相談もいくつかあるが、本気で90点や100点のまちを目指すなら、私も積極的に協力していきます。若い人や地域の人にまちづくりについて知ってもらいたいし、むしろ一緒に協働して地域を魅力的にする力を高めたいです。


取材協力:作山康教授

1983年芝浦工業大学建築工学科卒業。

同年(株)都市環境研究所入所。

2001年から2004年の間、東京大学都市工学科非常勤講師を務める。

現在は芝浦工業大学都市計画研究室教授。

持続可能なまちづくりを実現するための多角的研究を行っている。







bottom of page