本学環境システム学科の作山康先生に『東大宮の印象や個性、課題』について伺いました。都市計画やまちづくりの専門である作山先生ならではの観点で東大宮を語っていただきます。
「まず環境システム学科の特徴や先生の研究内容についてお聞きしたいです。」
環境システム学科とは、『都市・建築・環境』を学ぶ学科です。最近は『環境』を大きなくくりにして都市や建築はその一要素として捉えています。近年SDGsも話題だが、地域から地球レベルで住みやすい環境を作るため、都市や建築を学びつつ全体の環境を良くすることを学びます。
私は大学に赴任した2011年頃から団地の高齢化集団の実態調査を行っていました。近年はコミュニティ活性化やサードプレイスの研究にも取り組んでいます。夏頃は学生とともに環境系のイベントとしてクールスポットづくりも開催していますね。また、年2回開催する小学生対象の公開講座『段ボールシティ』は倍率10倍の人気イベントとなりました。東北の復興に関係した研究も行っていましたが、いまはある程度落ち着いてきたところです。
「東大宮周辺地域の印象はどうでしたか。」
区画整理も終わり地区計画も決定しているため、法律上の都市計画は終わってしまいました。駅前通りの無電柱化も終了。ハード面は完了しているが、教科書的な町並みに感じます。専門家からみると、もともと基盤整備というものは70点のまちづくり。80、90点にするにはどうするべきでしょうか。住民は現状に満足しているか伺ってみたいですね。部分的な改善ですが、自治会館や公園の再整備、ポケットパークなども考えられます。やり方はいろいろありますし、住民のニーズだからおしつけるのではなく、住民の意見を聞いて実証実験を行いたいですね。
「東大宮の魅力とは。」
駅の両側は飲み屋を中心にお店がたくさん分散していて、生活するには良い場所ですね。おいしい焼き鳥や和菓子屋もある。ただ、もう一つ何かあっても良いですね。休日の南池袋公園のように、ぼーっとしながら空間を楽しめる工夫があっても良い
と思う。東大宮は典型的なベッドタウンですが、自慢できるような憩いの空間があっても良い。あとは最近セキュリティが厳しいですが、大学を開放して散歩するとかどうでしょうか。
「東大宮の気になること、足りないことは。」
東大宮は意外に緑、街路樹が少ない印象です。公園や生産緑地のみで学園通りらしくないですね。枯れ葉の掃除などを理由に、緑化に消極的だったのでしょうか。そのような傾向になっていると感じます。
それと、ここは『ふるさと』というような自慢できる空間がほしいですね。それは自分たちで見つけなければいけません。一発作り上げれば市民の自信にも、市民の誇りにもなります。東大宮の魅力的な資源(大学や学生とまちづくり等)を活用するべきでしょう。コミュニティ誌もとても大事ですね。地域の魅力発見、イメージアップにもつながり重要です。
「地域の理想像はありますか。」
理想は学生がここで起業することです。本気で学習塾はできるはず。不動産会社と連携して空き部屋を使うとかね。駅前の塾でなく家で教えてほしい、信頼できる人を紹介してほしいという悩みがベットタウンでは発生します。学生が部屋を借りて、1対1の学習塾を行うのはどうでしょう。学生や不動産会社、親子にメリットがありますし。理系の芝浦工大生が家庭教師として、数学苦手な子どもに指導するとか魅力的ですね。
あとは住民が気軽に参加できるボランティアがあってもいいですね。1日からでも参加できるような。このようなささいなきっかけがコミュニケーションの輪を広げていきます。東大宮で幸せな生活を共有したり分け合ったりできるようなまちづくりをしていきたいですね。
「最後に、今後の目標を教えてください。」
地域のニーズとしてぼやっとしているものを翻訳、磨く手伝いをすることですかね。今はイベントをたくさんやっていて手一杯だけど、本気でやりたいという人には協力したいです。大規模プロジェクトの相談もいくつかあるが、本気で90点や100点のまちを目指すなら、私も積極的に協力していきます。
(取材:村山・𠮷田・月岡)
作山康教授
1983年芝浦工業大学建築工学科卒業。同年(株)都市環境研究所入所。2001年から2004年の間、東京大学都市工学科非常勤講師を務める。現在は芝浦工業大学都市計画研究室教授。持続可能なまちづくりを実現するための多角的研究を行っている。
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