一般企業ではだいぶ浸透してきた、働き方改革というフレーズ。
どんな業種でも問題視されねばならないはずだが、教育の現場においては浸透しずらい現実があるようだ。
教師なんだから学校の仕事がなにより優先だろうという空気感
業務を削ってサボろうとしてると思われるのではないか
2019年3月、ついに文科大臣からメッセージ(※1)が発出され、教育現場も強制的に「働き方改革」の波に乗ることになった。しかし、保護者からみて先生方の多忙さには変化がないように感じる。
ニュースで“志ある教師の過労死”と報じられることで、やっとその深刻さを知る。
このごろ学校の保護者会では、音声でもやり取り可能なネットゲーム、SNS上での深刻なトラブルについてのトピックが多くなった。
こどもたちが過ごす毎日は、もう自分たちの想像をはるかに超えたところにあって、そのこどもたちを預かる先生方の苦労も計り知れない。
だから、教師の働き方改革が言われるようになってよかったよね!でも、実際のところどうなの?
正直なところ、やっぱり職員室の電気は遅くまでついているし、先生は忙しそう。
担任の先生「働き方改革って言われるけど、人も時間もまったく足りなくて大変です!」って言ってたよ…。
ママ友と話したこんなことがきっかけで、保護者の立場からも何かアクションを起こそうと、1月下旬、さいたま市議 出雲けいこさん、羽生市議 齋藤万紀子さんと意見交換をさせてもらうことになった。お二人とも子育て中のママさんである。
意見交換にあたり、先生の「生の声」が知りたくて、身近な小学校の教員にアンケートをお願いして情報を集めた。
・30年度に比べて、31年度の業務負担は減りましたか?
・自分の子どもや受け持ちの児童に「教員」の仕事を勧めますか?
・その他ご意見
結果、先生方はご自分の理想の教師像があっても、実現できていないということがわかった。時間が足りなすぎるのだ。
「本当は、こどもたちの姿を浮かべながら、明日の準備をしたい。」
アンケートに書かれた、先生の生の声だ。
なんとかして、教員の増員や業務改善ができないものか。
市議のお二人も共感して下さり、プラス思考の有意義な意見交換となった。
< アンケート回答 >
・業務負担にあまり変化は感じない。多忙であることに変わりない
・教員の仕事は、やりがいがあるので勧めたいが、業務負担を考えると難しい。働く環境が改善されることを期待したい。
など
「Next学校の働き方改革フォーラム」2020年2月15日に参加
タイミングよくフォーラムが企画されたので、ママ友数名で参加した。~学校×家庭の対話~と副題がつき、学校の働き方改革の目的とは?「学校はたのしい」と思える働き方改革を目指すべく、教職員と保護者それぞれの立場から互いの思いを知ることで新たな気付きを深めようというものだった。
参加者の半数は現教職員、その他PTA役員関係や保護者。
学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊先生が講演の中で、「学び続ける教職員になっていますか?」と問いかける。
先生に余裕がないということは、先生自身の研鑽の機会を奪うことになり、結果こどもたちに影響がでるのではと。
その通り!と思う。
教科書通りのことならGoogle先生が解決してくれる。新しい情報を持たない先生からこどもたちは何を学べばよいというのか。
過労、短い睡眠時間、からだの不調によって気持ちも左右される。
Society 5.0(※2)の社会を生きるようになるこどもたちが、健全に、そして、世界基準で個性を発揮できるように育つためには、先生方の時間や心にゆとりがあること、からだの健康がなにより大事だとおもう。本来の教師の仕事を“HAPPYな気持ち”で取り
組めることが一番ではなかろうか。
・自分のアタマで考えて、解決できる能力。
・コミュニケーション能力。
・信頼を得ること。
・協同できる心をもつこと。
・他者を受け入れる心をもつこと。
こどものうちから身につけてほしいことは、たくさんある。
じゃあ、どうしたらイイ? 働き方改革を成功させるために。
パネルディスカッションで、ある校長先生がこう言った。
「業務を削ってサボろうとしてると思われるのではないかという思いもある。」
ちょっとした例を挙げると、我が子が通う学校の電話は繋がる時間が短くなり、登下校時の見守りに先生が歩道に立たなくなった。
すると、保護者や地域からポツポツ不満の声が上がった。
「先生色々しなくなったよね。前は一緒にやってたのに」
それは、ちゃんと理由があることを、保護者や地域が知らないだけのこと。
学校と保護者・地域が、もっと気軽に膝を突き合わせてお話できるようになれば、お互いを理解してよりよくなる気がする。
些細なことだけど、こういう対話の積み重ねが大事。
そして、これまで当たり前のように、保護者・地域が学校に任せきりにしてきたことを、自分事として意識改革していくことも大事だなと、改めて感じた。
また、勘違いされやすいポイントとして「こどもと向き合う時間をますます増やすための働き方改革」では“ない”ということを忘れてはいけない。なぜなら、すでに充分こどもと向き合っているからこそ、時間が全然足りないのである。
あくまでも、先生方が健全に幸せに教壇に立てるようにするための「働き方改革」なのだ。
どうせ変えられないと思うのではなく、よりよくするために考える。
「働き方改革は、意識改革」
いままさに、この改革がうまくいくか、このまま変わらないかの分かれ道。
個人的には、ぜったい成功してもらいたい!!!と思う。
皆さんはどうお考えだろうか。
ぜひ、ご意見ご感想をお寄せ頂きたい。
中山
~ ご参考までに... ~
中央教育審議会の答申概要に出てくる文言。
「今回の学校における働き方改革は,我々の社会が,子供たちを最前線で支える教師たちがこれからも自らの時間を犠牲にして長時間勤務を続けていくことを望むのか,心身ともに健康にその専門性を十二分に発揮して質の高い授業や教育活動を担っていくことを望むのか,その選択が問われている」
新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)【概要】(平成31年1月25日中央教育審議会)より
※1 文科大臣からのメッセージ(左)
平成31年1月25日の中央教育審議会答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」の考え方を踏まえ、文科大臣から関係各所へあててメッセージが出されました。(関係府省・関係団体宛、保護者・地域の皆様宛、教育委員会・学校の教職員の皆様宛の3種類)
中央教育審議会とは、文部科学省に設置された審議会であり、文科大臣の諮問に応じて教育・学術・文化に関する重要施策について調査審議し,建議するためにあります。
※2 Society 5.0とは、日本が目指す「新しい社会」
Society 1.0狩猟社会、Society 2.0農耕社会、Society 3.0工業社会、Society 4.0情報社会、これに続く我が国が目指すべき未来社会の姿とされる。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立させる。それがSociety5.0の新しい社会。
ビックデータを踏まえたAIやロボットが、今まで人間が行っていた作業や調整を代行・支援するため、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができるようになります。これは一人一人の人間が中心となる社会であり、決してAIやロボットに支配され、監視されるような未来ではありません。また、我が国のみならず世界の様々な課題の解決にも通じるもので、国連の「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)の達成にも通じるものです。
(内閣府ホームページ Society5.0 ―科学技術政策―より抜粋)
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